風光る5月。
何かに導かれるように訪れたボロアパートで、
化野(あだしの)ゆかりは季節はずれの分厚いコートを着た奇妙な男・犬塚ガクに出会う。
しかし、おかしなのは服装だけではなかった。

ひとつ、彼は幽霊である。

ひとつ、考え方が極端すぎる。

ひとつ、生きている人間に触れられないはずの彼は、ゆかりにだけは触れることができる。

***

どこか懐かしい空気をまとう彼に、触れられるのはなぜなのか。
絡みつくのは地と血の縁。
芽生えた想いを置き去りに、今、運命が加速を始める!

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岩代俊明・作『みえるひと』は第二十六譚・「犬塚我区」のとあるコマから妄想した、
「もしもガクに≪運命の≫女性がいたら」というパラレルな世界観をベースに、
絆の光と闇を描くハートフル・幽霊アパート・ビルドゥングスロマン。